30歳代前半の労働時間と子育てについて - (内容に間違いがあります)
この記事は、データの処理に問題が見つかったため、再度分析して書き直しました。修正版はこちらを参照してください。 - 2010/2/21
これまで見てきたように、収入面では世間で言われるほどには、今の人の生活が昔の人に比べて苦しくなっているということはない、ということが分かりました。1月16日の記事は支出面を見ることで生活水準を別の視点から分析したものですが、他にも注目すべき観点が残っているので、これから順番に見ていこうと思っています。
今回はまず、生活時間の面を見てみたいと思います。これは、子育てが難しくなっている理由のひとつに、世帯あたりの労働時間が長くなって、子育てに掛けられる時間が少なくなっているということがあるかもしれない、という仮説があるからです。
国民の生活時間がどのように使われているかについては、「総務省 社会生活基本調査」という統計で見ることができます。ただし、この統計は世帯単位での集計ではなく人単位での集計で、世帯単位の労働時間という観点で見ることはできないので、この統計をベースに世帯単位の時間を推定する必要があります。
表1 生活時間の時系列比較 (1日あたり時間、週平均)
30-34 | 40-44 | ||||||||
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男性 | 女性 | 男性 | 女性 | ||||||
総数 | 有配偶 | 総数 | 有配偶 | 総数 | 有配偶 | 総数 | 有配偶 | ||
仕事 | H18 | 7.17 | 7.65 | 3.27 | 2.12 | 7.58 | 7.83 | 3.68 | 3.32 |
H13 | 7.05 | 7.33 | 2.64 | 1.91 | 7.08 | 7.26 | 3.25 | 3.06 | |
H8 | 7.13 | 7.27 | 2.50 | 1.90 | 7.18 | 7.29 | 3.63 | 3.17 | |
学業 | H18 | 0.04 | 0.02 | 0.01 | 0.02 | 0.01 | 0.00 | 0.00 | 0.00 |
H13 | 0.03 | 0.00 | 0.01 | 0.01 | 0.00 | 0.00 | 0.01 | 0.01 | |
H8 | 0.00 | 0.01 | 0.02 | 0.00 | 0.00 | 0.00 | 0.00 | 0.00 | |
通勤通学 | H18 | 0.82 | 0.83 | 0.43 | 0.25 | 0.88 | 0.90 | 0.41 | 0.35 |
H13 | 0.52 | 0.53 | 0.22 | 0.14 | 0.50 | 0.50 | 0.22 | 0.19 | |
H8 | 0.53 | 0.52 | 0.20 | 0.14 | 0.52 | 0.53 | 0.21 | 0.19 | |
その他 | H18 | 8.36 | 7.90 | 12.80 | 14.13 | 8.17 | 7.92 | 12.98 | 13.47 |
(睡眠を | H13 | 9.05 | 8.80 | 13.85 | 14.68 | 9.16 | 9.00 | 13.82 | 14.07 |
除く) | H8 | 8.97 | 8.85 | 14.02 | 14.75 | 8.94 | 8.83 | 13.14 | 13.92 |
※ 総務省 社会生活基本調査 平成8年、平成13年、平成18年 より
統計データの関係から、10年前との比較しかできないですが、30-34歳の女性のみ仕事時間がはっきりと増加しています。これはさらにデータを詳しく見ると、仕事時間の少ない有配偶者の率が減ったことと有配偶者自身の仕事時間が増加したことの両方の効果があります。それ以外の分類では、仕事時間は横ばいないし微増です。
この結果は、1月24日の記事で見た就業率のデータともほぼ一致します。やや異なるのは、男性の就業率が10年間で微減している中、平均仕事時間の方は横ばいないし微増である点で、有業者に絞ってみればわずかながら増加傾向にあるといってよいかと思います。
また、すべての分類で、通勤時間が5年前と比較して60〜100%増加していることが分かります。こちらの原因は心当たりがなくもないですが、今のところ不明です。今後の分析課題にしておきたいと思います。
「最近の人は、ワーク・ライフ・バランスに気をつけて、家庭を大切にする人が増えている」ということが一般的な理解ではないかと思うのですが、統計の上からは、仕事時間・通勤時間共に増加して、ワーク・ライフ・バランスがワークに傾く傾向がより強くなってきていると言えるのではないかと思います。昨今のワーク・ライフ・バランスを重視する社会的な風潮を鑑みるに、生活時間の配分の上で、理想と現実のギャップはより大きくなっているのではないかと推測することができ、特に子育ての主役になる若い女性において、より大きな問題になっていると考えられます。
世帯人数の減少もこの傾向に拍車をかけている可能性がありますが、その分析は今後の課題としたいと思います。