なぜ最近の若い男性が結婚できないのか?
ちょっと刺激的なタイトルですが、2月7日の労働時間の分析を行っているときに、興味深いデータに気づいたので、少し深く分析してみようと思いました。前回の分析では、有配偶者のデータを調査しましたが、年齢階級別の有配偶者の比率を調査してみると面白いことがわかるのではないかと思ったのです。
有配偶者数と比率は、前回使った「総務省 社会生活基本調査」にも推定値が掲載されていますが、「総務省 国勢調査」の方がより正確な値でより長い時系列データを見ることができます。なお、国勢調査は他の調査とは違い、統計的な標本調査ではなく、全数調査なので、日本国民のほぼ全員からの回答を集計する精度の高い調査ということができます。
表1 有配偶者率の推移 (%)
有配偶者率 | S50 | S55 | S60 | H2 | H7 | H12 | H17 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
男 | |||||||
20-24 | 11.8 | 8.1 | 7.4 | 6.2 | 6.5 | 6.8 | 6.2 |
25-29 | 51.2 | 44.1 | 38.7 | 33.9 | 31.6 | 29.6 | 27.4 |
30-34 | 84.6 | 77.0 | 70.2 | 65.2 | 60.4 | 54.9 | 50.6 |
35-39 | 92.4 | 89.4 | 83.2 | 78.1 | 74.3 | 69.2 | 62.7 |
40-44 | 94.3 | 92.7 | 89.2 | 84.3 | 79.4 | 76.1 | 70.3 |
女 | |||||||
20-24 | 30.3 | 21.9 | 17.9 | 13.5 | 12.6 | 11.3 | 10.4 |
25-29 | 77.8 | 74.5 | 67.7 | 57.5 | 49.6 | 43.5 | 38.2 |
30-34 | 89.8 | 88.0 | 86.1 | 82.7 | 76.4 | 68.9 | 62.7 |
35-39 | 90.6 | 90.2 | 88.3 | 87.3 | 84.7 | 79.2 | 72.4 |
40-44 | 88.7 | 89.5 | 88.4 | 87.1 | 86.1 | 83.3 | 77.5 |
※ 「総務省 国勢調査」より
男性の30〜34歳の有配偶者率は、昭和50年のころは84.6%あったのに対し、平成17年には50.6%にまで減少しています。つまり、現代の30代前半の2人に1人は独身であるのに対し、その父親の世代では5人に1人しか独身はいなかったのです。どうしてこんなことになっているのでしょう?
鍵は、女性の有配偶者率にあります。女性の25〜29歳の有配偶者率は、昭和50年のころは77.8%あったのに対し、平成17年には38.2%にまで減少しています。30〜34歳を見ても、89.8%から62.7%になっています。
1月24日の分析でも述べましたが、女性の就業率は大きく増加しています。
表2 女性の就業率の推移 (%)
S50 | H17 | |
---|---|---|
20-24 | 64.4 | 65.0 |
25-29 | 41.4 | 70.3 |
30-34 | 43.0 | 58.8 |
35-39 | 53.1 | 60.0 |
40-44 | 59.2 | 68.3 |
※ 総務省「労働力調査 長期時系列データ 年齢階級(5歳階級)別就業者数及び就業率」より
表1と表2を見比べると、昭和50年当時は、女性は25〜29歳になると退職して結婚をするという傾向があることがはっきりと読み取ることができます。平成17年になると、それが30〜34歳にシフトしていることが読み取れます。また、その傾向も昭和50年当時と比べると弱まっていて、昭和50年には30歳以上では有配偶者率が約90%で安定しますが、平成17年には30歳以上でも年齢が上がるにつれて有配偶者率が増加しています。これは、結婚年齢が上昇すると同時に分散もしているということを意味します。
噛み砕いて説明すると、昭和50年ごろは、女性は学校を卒業後に就職するものの、就職して数年も経たずに結婚して退職するというのが一般的だったのに対して、平成17年には、学校を卒業後に就職する割合こそ昭和50年ごろとさほど変わらないものの、20代はしっかりと仕事をして30歳前後から結婚を真剣に考え始め、40歳ごろまでに結婚するというのが一般的というように変化してきたということができるように思います。
これに対して男性の側がどう対処しているかということを見るために、厚生労働省の「人口動態統計」から、初婚夫婦の年齢差を見てみます。
表3 初婚夫婦の年齢差別婚姻割合の推移 (%)
年齢差 | S45 | S50 | S55 | S60 | H2 | H7 | H12 | H17 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
夫が2歳以上年下 | 5.3 | 6.4 | 6.0 | 6.0 | 7.3 | 9.6 | 12.4 | 13.8 |
夫婦の年齢差が1歳以内 | 26.8 | 32.3 | 31.2 | 33.5 | 36.5 | 40 | 43.1 | 42.7 |
夫が2歳以上年上 | 67.8 | 61.2 | 62.8 | 60.5 | 56.2 | 50.3 | 44.4 | 43.6 |
※ 「厚生労働省 人口動態統計 婚姻 第6表 初婚夫妻の年齢差別にみた婚姻件数・構成割合の年次推移」より
昭和50年頃には、男性が年上の結婚が圧倒的に多かったのに対して、現代では男性が年上の結婚と男女の年齢差がほとんどない結婚がほぼ同じ割合になってきていますが、依然として男性が年下の結婚は少数派です。ただし、男性が年下の結婚が依然として少数派である理由が何であるのかは、この表から読み取ることはできません。
先の分析によれば、現代の女性の多くは30歳頃になって初めて結婚を考え始めるため、男性が年下である結婚が主流でないということは、必然的に男性の結婚年齢は30歳以上であり、かなりの割合が30歳中盤以降まで独身であることを余儀なくされます。このことは、表1の男性の有配偶者率を見てもはっきり読み取れる傾向です。
まとめると、最近の若い男性が結婚できない理由は、女性の結婚年齢が上昇し、かつ、男性が年下の結婚があまり一般的でないためであるということができます。