昔と比べて今は35歳世代で仕事のない人が増えているのか?

前回、所得格差のデータをチェックしたので、今度は失業の方を見てみたいと思います。といっても、そもそも統計において失業というのがどう捉えられているかを確認しておきたいと思います。
労働力調査に関するQ&A」によれば、全人口(15歳以上)は次のように分類されます。

全人口(15歳以上)労働力人口就業者(過去1週間で仕事をした者)
失業者(過去1週間で職探しをした者)
労働力人口

過去1週間で職探しをした者には、求人に応募したり面接を受けたりする者の他、事業を始める準備をしたり応募や面接の結果待ちをしている者も含まれるようです。なお、この失業者の定義は国際基準に準拠していますが、国によって微妙に異なります。ただ、その違いが統計上大きな差になることはないようです。たとえば、次のブログの記事で日米の比較を行っているのが参考になります。

世間でよく聞く「失業率」は次の式で計算します。

これとは別に「就業率」というものも計算することができます。これは次の式で計算します。

  • 就業率 = 就業者 ÷ 全人口

これをみると、失業率というのは労働市場の需給をあらわした指標であるものの、長期的な就業状態の比較をするに単純に使うのはちょっと待ったほうがいいということがわかります。つまり、失業率の増加は、就業者の減少だけでなく労働力人口の増加も原因となりえるからです。

そこで、今回は失業率ではなく就業率の方を見ていきたいと思います。

表1 就業率(%)

30〜34 40〜44 50〜54 団塊の世代
総数 男性 総数 男性 総数 男性 の年齢
昭和52年 1977 71.1 96.7 78.8 96.2 75.3 94.7 28〜30歳
昭和57年 1982 72.1 95.7 80.2 96.1 75.9 93.8 33〜35歳
昭和62年 1987 72.1 94.7 81.2 95.5 76.8 93.3 38〜40歳
平成4年 1992 74.0 96.2 83.1 96.9 81.2 95.9 43〜45歳
平成9年 1997 74.7 95.4 82.8 95.9 80.8 95.4 48〜50歳
平成14年 2002 74.2 92.1 81.0 93.9 78.6 91.9 53〜55歳
平成19年 2007 77.2 93.1 82.1 94.4 80.9 92.8 58〜60歳

(※ 総務省労働力調査 長期時系列データ 年齢階級(5歳階級)別就業者数及び就業率」より)

これを見てわかるのは、30〜34歳の就業率は一貫して上昇していることです。40〜44歳、50〜55歳の就業率に比較しても顕著です。ただし、男性のみの就業率を見てみると、やや下降気味です。しかし、反対に女性の就業率は大きく伸びているため、全体としては伸びているのです。

就業者数の方も見てみましょう。

表2 就業者数(万人)

30〜34 40〜44 50〜54 団塊の世代
総数 男性 総数 男性 総数 男性 の年齢
昭和52年 1977 641 437 663 405 482 287 28〜30歳
昭和57年 1982 795 531 697 416 571 350 33〜35歳
昭和62年 1987 599 397 724 426 624 375 38〜40歳
平成4年 1992 575 378 912 534 685 401 43〜45歳
平成9年 1997 611 395 686 400 705 413 48〜50歳
平成14年 2002 703 440 629 367 843 491 53〜55歳
平成19年 2007 727 444 669 387 657 376 58〜60歳

(※ 総務省労働力調査 長期時系列データ 年齢階級(5歳階級)別就業者数及び就業率」より)

就業者数で見ても、近年の30〜34歳の就業者数は上昇しています。注目すべきは、男性のみで見ても就業者数が増えている点です。

なお、就業者数でみると、団塊の世代にあたる階級は、その前後の世代と比較しても就業者数が多いことが分かります。しかし、近年の30歳代の就業者数は、団塊の世代に匹敵するほどのボリュームになっていることも見ることができます。

このように数字を追ってみると、世間で言われていることに反して、30歳代の就業率、就業者数共に増えているということが分かります。「長引く不景気で若者の働き口が失われた」という命題は、就業率、就業者数という数字の上では否定されることになります。