35歳の年収の話がJ-CASTニュースに取り上げられたようですが

35歳で年収300万以下 団塊ジュニアの苦難続き人生
個別の事例を取り上げて問題喚起をするというのはよいのですが、そこで統計データを恣意的に解釈して都合よく自分の主張の証拠にする態度はいただけないなぁと思います。
冒頭に「35歳の年収は、10年前より200万円下がった」と書いていますが、1月13日の記事に書いたように平均値は200万円も下がっていません。30〜35歳の平成19年の平均は10年前に比較して、50万円程度下がっただけです。しかも、10年前は90年代の不況にもかかわらず給与が上がり続けたあとで、さらにその10年前と比較すると110万円も高い時期にあたります。平成19年とその20年前を比較すると、依然として60万円も高い水準です。
たしかに、10年間で50万円も平均給与が下がっているわけなので、苦しくないはずはないですが、20年も経済成長が止まっていることと、10年前の給与水準が高すぎることを考えれば仕方がないともいえます。それでも、物価調整して比較してみても、20年前と同じ水準の給与を貰っていることになるので、もしそれで生きていけない、子供が育てられないというならば、それは単なる給与水準の問題ではないはずです。
1月16日に書いたように社会保障とインフラのコストが高騰を続けていて、家計を圧迫しているというのが、大きな問題として1つあります。これらを除いた実質的な生活水準は、この10年ほどの間30年前よりも低い水準に落ちてしまっている上に、今もさらに低下を続けているのです。今感じている生活の苦しさは、給与水準が低いのではなく、社会保障とインフラのコストが高すぎることに求めるほうが、統計データには合致した分析です。